半落ち


"志木と山崎の視線が一瞬絡んだ。互いの目が告げた。 梶聡一郎は「半落ち」――。”





著・横山秀夫


これは...読んだことあるかも…? しまった...。
どことなく既視感を抱えつつも、しかし一気に読んでしまった。

息子を急性骨髄性白血病で無くした夫婦。妻は次第にアルツハイマー病が進行していき、ついには息子の命日すら忘れる自分に絶望し、夫に「息子の記憶がある内に母親として死なせてくれ」と悲痛な願いを託す。その願いは遂に果たされ、空白の2日間を挟んだ後に、夫であるその警部は自首をした。
警部が起こした嘱託殺人事件として、当の県警は大きく揺れる。
この事件と空白の2日間という謎を核として、指導官、検察官、記者、弁護人、裁判官、刑務官、とそれぞれの視点を移しながら真相に徐々に迫っていくというのが物語の運びだ。

組織の政治判断あるいは権力による不義、というものと、個人の義憤、というものの対立を挿し込みつつ、各章を数珠つなぎしているのは、”空白の2日間”の謎であり、それに対する登場人物が抱く想いでもある。

立場を超えて人と人が繋がる瞬間を描いた、血の通った、暖かい温度をもった物語だなぁと、読後の余韻にそう感じることができる一冊。

ちなみに、当時直木賞候補であったこの作品、選考委員会から出た批判に激怒した著者は、直木賞から決別をしたのだそうな。
このあたりのストーリーは、以下のリンクに詳しい。



著者の他の作品である「クライマーズ・ハイ」も当時話題になったが、その題材になったのは1985年8月12日におきた日本航空123便墜落事故であり、32年前の昨日のことだ。
奇しくも昨日、羽田空港から大阪空港に向かっていた全日空機が、客室内の気圧を保つシステムの異常を知らせる警報が作動したことで、羽田に引き返した、というニュースがあった。被害は出なかったが、奇妙な出来事という他ない。。

P.S.
7年前にやはりこの本読んでBlogに書いていた、、遂にやってしまった、、



コメント