まず二冊


湖底のまつり

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創元推理文庫 / 著・泡坂妻夫


あらすじは伏せる。
ある出来事に纏わる経過を数人の視点から見ることで、徐々に話の全貌が見えてくるストーリーで、そこには作者の様々な仕掛けが施されている。
少しずつスライドしていく視点、その視点と視点とのギャップが物事の輪郭を立体的に表していく。その過程には記号のような表現が混じり、読後なるほど、だからあんな訳わからん言い回しをしていたのか、となる。

いわゆる叙述トリックを用いた進行で、いくつかの伏線の中でも係る情事や表現がそこだけ力点を置かれていることを読みつ感じつ、異次元すら感じる断絶の空間に時折ぽかんとし、途中途中、読書を中断することがあることでイマイチ引き込まれるということがなかった。
翻って思うに、こうしたジャンルは好きじゃないのかも?と思ったり思わなかったり。





棺の中の猫

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集英社文庫 / 著・小池真理子

“私はこれから始まる自分の人生が、その夜と同様、ひんやりと重苦るしく暗いものになるであろうことを予感して、震えながらその場にうずくまった。”


あらすじを引用。
東京郊外に暮らす美術大学の講師、川久保悟郎。その娘でララという名の猫にだけ心を開く孤独な少女、桃子。そして、家庭教師として川久保家にやってきた画家志望の雅代。微妙な緊張を抱きながらもバランスのとれた三人の生活はそれなりに平穏だった。そう、あの日、あの女が現れるまでは……。

妻が以前からハマり中の小池真理子さん。天邪鬼のため人の勧めで読むというのはあまり無い(これを言うと怒る人がある..)のだけど、あまりに熱心にハマっているのを眺めていると、一冊くらい読んでもみようかという気が起きてしまい、悔しくもある。

表現が豊富だなあ、というのが読んでいての最初の感想。
ストーリーはシリアスで、それに反発するかのように色彩豊かなメタファーを繰り広げては、読者の読む行間に深みを与えてくれる。
物語の帰着も一筋縄のものではなく、人間の業というものをただ一度の回顧という告白の形を借りて、その深さを余人を以って知らしめる。

「恋」という小説で直木賞を取っているらしい。もう少し読んでみようかな?

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