気候変動とエネルギー問題

"すべて世の中にあるものにはまったく無意味なものはない、という意味で100年後の気候を研究する事に意義はある。しかし、それは何人かの気候学者がコツコツと取り組むべきことであって、国が年間一兆円を投じるべきテーマでは、断じてない。"



著・深井有

クライメート事件。
それは二酸化炭素が地球温暖化の原因だとする調査を行った(行っている)政府間パネル IPCC の、研究データ操作隠蔽が暴かれた事件だ。
これによりIPCCの信用は失墜し、二酸化炭素が温暖化をもたらす諸悪の根源である、という誤解は世界中に知れ渡った。日本を除いては。

(続きはタイトルをぽちり)



日本はというと京都議定書を批准し、1990年を基準に2012年までに年間排出量の6%を削減するという目標を課せられた。
もともと日本は省エネ技術が発達して先進国でもトップであり、6%削除という目標は現実的ではなかった。
目標が達成できない場合、他国から排出権を購入してその穴埋めをするのだが、その額およそ8000億円にも上るという。
そう、これは排出権という巨額の利益を生み出す、既得権作りのゲームであり、日本はまんまと一杯食わされたのである。
また悪知恵として、二酸化炭素を悪者にすることで、火力発電を抑え原子力発電を推進させるという、悪しき足かせにもなった。

いま、IPCCの悪事は暴露し科学的根拠も失われた二酸化炭素増加による温暖化説。
なぜ日本はマスコミがこれを広く伝えず、むしろ隠しているのか。原子力発電を推進したい思惑のある電力会社とマスコミの癒着によるものなのか。
既に根拠を失った枠組みに、1兆円もの支出は国益を損なうだけである。震災で苦しむ国民を無視して、ただただ溝に流すが如く血税を放出しようとしている。
今すぐに日本はこのマネーゲームから脱退を行い、使うべきところに資本を投入すべきである。

私見と著者が持つ怒りを交えるとそんなところではあるが、この話は今に始まったことではない。
誤解があるといけないので付け足せば、二酸化炭素について言うとき、温暖化を促進するものではなく、化石燃料の埋蔵量減少の面から言うべきである。
文明の発達は化石燃料の発掘により進歩を遂げ、低エントロピーを維持するためにその燃料投下は不断でなければならない。
人類は、過去地球上に存在していた生物達の蓄え、いわば親の貯金を湯水のごとく使いほうけて暮らしている。
これについては以前のエントリーでも触れたけど、つまり、未来の子孫達のために、貯金は使い切ってはいけない。新しいエネルギー源を確保しなければいけない。
と、だいぶ立派な事を言ってみる。

さて本書では、その前半は前述したICPPのクライメート事件と、地球温暖化について、データを基に検証を行っている。
ICPPの二酸化炭素悪者説をボコボコにしたところで、エネルギーについて触れて行く。

この本で面白いのは、知らなかった新しい説や技術を教えてくれるところだ。
例えば現在の温暖化説の紹介の中では、気温変動は宇宙線の影響を受けたものであり、天の川銀河系の回転と、過去地球で起きてきた気温変動のそれは同期している、という説だ。
太陽活動もこれに関係しており、紹介されるデータごとの一致性は、おーなるほど、と説得力がある。
エネルギー面で言えば、未来の一次エネルギー源の紹介に核融合炉が紹介されており、それには2つの方式があるという。
1つは磁場核融合方式で、磁場で高温プラズマを保持して核融合反応を持続的に起こさせる、いわばミニ太陽を作ろうとする試みらしい。これはITER計画なるものが現在走っているらしいが、その実なんとも先行き怪しげである。
ガンダムへの第一歩か!とも思われるが、本書での紹介は、その計画にはアヤスィ香りが漂っている。
もう1つにあるのは慣性核融合方式なるもので、短時間に爆発的に核融合反応を起こさせる、ミニ水素爆弾を繰り返し爆発させるというやり方だ。
これは超強力レーザーを射出し、核融合反応を起こすという、「戦艦大和の映画でそんなシーンなかったっけ?」と思われる、読んでいてイメージし易くワクワクするような方式だ。
いや水素爆発が繰り返し起こるとか怖すぎるけども。

ともかく、気候変動に関する虚構とトレンド、そして核融合炉の現状について教えてくれる本である。

コメント