エネルギー

エネルギーに関する本を2冊読んだ。

先の震災により数多の困難を抱える現在だが、その大きな困難である一つに、原発問題がある。
甚大な被害を及ぼし、この先も及ぼし続ける福島原発。
震災以降様々な論争が起こり、今尚続く、原発継続か、否か、という論争。
これは今後日本がどのようにエネルギー計画を実施していくかという、エネルギー論争だ。
原発は必要か?原発を代替するものは?そもそもエネルギー事情はどうなっているの?
震災後から続くエネルギー論争を目の前に、エネルギーについて知らねば、どの話を聞いても右から左だ。

今回本を読んで驚いたのは、"いかにエネルギーのことについて知らなかったか" だ。
技術者をはじめとしたエネルギー業界の努力が日々行われており、様々な発展について知ることができる。
原子力発電が電力発電の主役になっている(少なくともそうしたイメージを持っていた。) かのような妄想は、これら本を読んでどこかに消えた。
代わりに、今まで知らなかった情報に触れることで、エネルギーの将来は決して暗くない!という期待も持つことが出来た。
(そのためには国が最適なエネルギー政策を示してくれる必要があるけど、、、)

なぜこうした情報を今まで知らなかったのだろう。
もちろん、俺の不勉強という声も聞こえてくる。今頃か、という声も聞こえる。
そうした声に反省しつつ、お勉強できる本だった。

(続きはタイトルをぽちり)




エネルギー論争の盲点

"エネルギー・環境問題については、経済的・物理的な基礎はもちろんのこと、人口、人類学、歴史などの観点からも、総合的に、いわば哲学的、原理的な次元まで掘り下げて考えるべきである"




著・石井彰


原発か再生可能エネルギーか。

昨年の3.11に起きた震災を発端に、原子力発電の危険を目の当たりにした人々が、盛んにエネルギー論争をするようになった。
マスメディアでも様々な学者や専門家達が登場しては話題になる。
しかし。
現在世の中にはびこる論争は、的を得ていない。
エネルギーの問題に魔法の解決策などない。
当面は「マンドリングスルーする(何とかかんとか折り合いをつけていく)」方策を探って行くしかない。
筆者はそう語り、俯瞰的な立ち位置から、エネルギーについて語り出す。

うおー、そうだったのかー!という事ばかりの内容で、自分の無知が露になる。
そもそもエネルギーって何よ、って話から、現状の社会はどうなのか、歴史上のエネルギーはどう変移してきたか、そして各エネルギーについて、、などなど、平易にエネルギーとその問題点について教えてくれる。
そして冒頭に記した筆者の言葉にある通り、エネルギー史をさくっとまとめてあり、いかにして今の低エントロピー社会が築かれてきたのかが綴られている。
メソポタミア文明の滅亡や、農耕革命、産業革命、世界大戦などの背景にあったエネルギー事情や歴史について。
そして大きな利用価値のある、天然ガスとコンバインドサイクルの活用について、筆者はその価値を語るのだが、無知蒙昧である俺にとってはただただ頷くばかり。

エネルギーって何だろう?という疑問に対して、たった215ページの新書で、凝縮して教えてくれる、入門的な本である。

エネルギー業界の常識をかじったところで、もうちょっとその話に潜ってみようとするのが、次の本だ。


新エネルギーが世界を変える―原子力産業の終焉

"こうしたノンビリした意見を述べているのは主に、原子力の深刻さをこれまで一度も考えたことがない、まことに無知で、不勉強な事象「文化人」たちなのである。つまり日本人が、原発の完全のな終焉を、次の大事故があったあとに迎えるか、それとも、知性的な意志に基づいて、サッパリと決断するかである。"



著・広瀬隆

俯瞰的にエネルギーとその歴史について見ることが出来る先の新書であったが、本書は日本の電力事情や二酸化炭素問題について斬り、現在進行形の、新たな技術とその歴史について教えてくれる。

(先ほどの新書にもデータは乗っていたけど) 本書の前半は、各章ごとにデータを記して論じられる。
例えば電力事情について、一般家庭の熱エネルギー利用率は62%もあり、すべて電力利用しようとするその無駄やコジェネの話があったり、計画停電において如何に余力があったかを検証する話、化石燃料の埋蔵量の話や、二酸化炭素による地球温暖化データの矛盾、などなど。
さらに後半では期待される燃料電池について、その歴史とともに詳しく述べられている。

コンバインドサイクルや天然ガス、コジェネ革命とその分散型電源のメリットは新書でも語られている通りだが、それをより掘り下げた内容になっている。
前述の通り本書の後半は燃料電池について大部分を避けており、その技術進歩の描写にはスピード感と筆者の期待感が迫ってくるようで、技術的な話や化学式が並ぶことがあるものの、それほど苦にせず読めてしまう内容になっている。
さらに各技術における業界事情や歴史を絡めて述べられていて、どれも濃厚な話だ。
間違いなく技術は進歩しており、企業は試行錯誤を重ねて様々な手段を世に提示している。その事について教えてくれる本だ。
(個人的には、バイオマスエネルギーについてもう少し読んで見たかった。)
その他、この本を読み終えた後に感じた事に、先ほどの新書に比べて、本書は筆者の意見が色濃い点がある。
原発擁護をはじめとした電力業界の腐敗、現実を知らない珍妙学者やエセ自然保護論、さらにはエネルギー無策の国政など、その怒りを露にした、筆者の感情もはさまった本になっている。


前述の書は中立的な視点に努めようとする筆者のエネルギー哲学を読めるのに対して、後述の書は反原発の怒りを基礎にした新エネルギーへの期待を読むことができる。


奥の深いエネルギー話。まだまだ入り口を覗いただけだ。

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