ちいさな哲学者たち


フランスの幼稚園で、あるユニークなカリキュラムが実験的に行われた。
そのカリキュラムとは、「哲学」。
幼く見ているだけでもかわいい園児達が、友達と恋人の違いであったり、肌の色の違い、あるいは死ぬことについてであったりと、自由活発に様々なテーマに付いて話し合う、ドキュメンタリー映画。

(続きはタイトルをポチっとな)



過去のヒューマン系のフランス映画では必ずと言ってもいいほど睡魔と格闘していたわけだけど、ドキュメンタリー映画である本作でもご多分に漏れず、冒頭は何度か気を失いかけた。
そのはずが、気付けば笑いながら園児達の会話を見ていたという不思議。
哲学と聞けば何か難解で深淵なものを想像するけど、そんなことなく園児達はいつの間にかその世界に、自然と足を踏み入れている。
内容は見てもらうとして、次の3つの視点から映画を楽しめた。

-コミュニケーション
生きるとはなんぞや。死とはなんぞや。
1人でむにゃむにゃと考えるのではなく、園児同士で考えを話し合う。
そういった、コミュニケーションの場がカリキュラムとして提供されている。
園児達がテーマにまつわる意見を自由に発して、先生がうまいことリードしていく。
そして重要なのはその背景。
哲学のクラスを開く時に、かならずテーマが宿題として渡される。
そのテーマは家に帰って園児達がそれぞれ家族と話をしたり、あるいは観察して考えを育む。
園児同士のコミュニケーションだけでなく、家庭でのコミュニケーションの質も高まる、そんな効果も見て取れる。

-ユーモア
毎回色んなテーマが話し合われるんだけど、可愛らしい意見があったり、ハッとさせられる意見があったり様々だ。
そして身の回りの観察からくる意見の中には、あられもない家の事情が語られて親的にプライバシーは大丈夫なのか!?という発言もあったりする。そして大抵それは面白い。
ある子の話では、ジョーダンのような話のオチが実は本当に起こった事件だったり、恋愛の話ではいちゃいちゃし始めたり、と思いきや月日は立って関係が変化したり、中にはプレイボーイが誕生したりと、、、
園児達はいたってまじめに、というか純粋に話をしているだけなんだけど、何の偽りも無く開けっぴろげな会話が、見ていて楽しくさせてくれるのだ。
茶目っ気ある編集が、それを効果的に見せてくれる。

-成長
最初は話し出してその内じゃれ出してしまう園児達が、回を重ねるごとにしっかりしてきていて、後半では他の意見に対して賛成、反対を示してその理由を述べるから驚き!
園児達は明らかに、哲学クラスで行ってきたコミュニケーションや考えを通して成長していることを、映画後半で窺い知れるようになっている。
中には先に言ったようにプレイボーイに成長した男の子もいれば、回を重ねるごとにその賢さで存在感を増す女の子もいたり、逆に最初ほど先頭に立たなくなった子(おそらく最初ほど興味がなくなってきている)もいたりと、いろんな子の経緯を見ることができる。

といった具合に、いかに子供が賢くて物事を見ていることを教えてくれる本作。
家庭のプライバシーから、人種に関わるデリケードな会話まで突っ込んだ園児達の純粋な会話が撮られていて、ドキュメンタリーならではの楽しみもできる。
子供を持つ人にとっては、見たあとに子供との接し方を考える一つにもなる作品じゃないかなぁ。
と、妄想しながら映画館を後にした。

上映している映画館は多くないけど、お暇があえばいかがでしょ。

コメント