しげちゃん田んぼにたつ

"私の餅作戦は失敗しました。いえ、嘘です。しげちゃんが餅で死ぬのを期待なんてしてませんです。ほんとうです。"

しげちゃん田んぼに立つ   続々「ばらとおむつ」   (角川文庫)

著・銀色夏生 (の兄、せっせ)


銀色夏生の兄弟姉妹で一番上の兄であるせっせが、病気になった母であるしげちゃんと一緒に暮らす日常を、ユニークに、リアルに、そしてブラックに書いた日記。
せっせが定期的に兄弟姉妹へメールで送っている記録で、それを本にしたものである。

友人から借りた一冊。
銀色夏生さんLOVEな人で、俺はというと銀色夏生さんの銀の字も知らなかったんだけど、読んで味噌というので読んでみたよ。

統合失調症の気があり、さらには脳梗塞で要介護の状態となり、デイサービスに通うしげちゃん。
それに加えて認知症の症状も出てきて、老いが年々如実に出てくる。
しかしせっせはそんなしげちゃんを時に転がし、時に振り回されながらも、二人の生活を送る。
ささいなことからイベント、トラブル事など、せっせのユーモアで送る介護の日常。
そして、歯に衣着せぬ、会話口調で書かれているから面白い。
宮崎が舞台だけど、うちの田舎(福岡)の言葉と似通ってる部分もあって、親近感というか、会話の感触がすごく伝わってくる。
そしてこの歯に衣着せぬ感じは田舎のじいちゃんばあちゃんそして親戚と同じだ。
特にばあちゃんと、親戚いとこ (父親の姉とその娘達)は歯に衣着せぬ達人というか、躊躇なく思った事を口にする。
でもそれは軽快なテンポで清々しいくらいで、そして驚くほどにユーモアたっぷりなのだ。だからブラックトークであっても全然嫌みなんて感じない。
俺自身話す事は得意なことではないけれど、口から出てる言葉達はフィルターがかかってる。
それは思考や性格といった通路を通って出てくるんだけど、通ってくる間に余計なものがたくさん付着しているのだ。
でも彼女達のフィルターは凄くシンプル。自分の中に発した"意"が口から"言葉"になって出てくる通路は、俺に比べてとっても短いと思う。(余計な通路を通っていない、って意味ね。)
小さい頃から馴染んでいるというバイアスもあるけど、俺の周りではトーク力はピカイチだとこっそり思っていて、会う度に少しでもあのトーク力が欲しいと思っては叶わぬことを思い知る。
これって成長する過程の中で、東京と地方の環境の違いはもちろんあると思う。
でも最終的には自分自身がどう形成していったかってところだしなー。

さて話が逸れた。
なので、九州の人は概ね同じなんだなーとか思いながら(失礼) 、この本を読んでいた。

せっせが生暖かく見守るしげちゃんの色々な面が見える。
介護認定の試験でがんばるしげちゃん、恋の予感を漂わせるしげちゃん、相撲をみながら手で判定をするしげちゃん、二日市で商売に精を出すしげちゃん、などなど。

(; ゚Д゚) これは!ウンコ、ではないか!

たまに、せっせもこんな事を言う。顔文字を駆使して若いなぁ(ニヤリ
このせっせ、かなりの改革派で、家の庭にあったジャングルの様な植物達を一掃したり、土地の整理や敷地の改造、さらには買ったばかりの車を自分でぶつけておいて、ぶつかった柱を切り落としたり!、などなど。
ヘビーな生活環境にある実家をどんどん変えて行く。
一方で、親戚付き合いやその揉め事、土地に関わる喧嘩など、田舎ならではの事情の話も垣間みれる。

紹介がなければこういったものは読まなかっただろう本。前作2冊でてるみたい。
こういった日記調やエッセイといったものは、作者やその周辺を知っていると、楽しみ方が違うのかもね。
そういえば、エッセイ作品ってあんまり読んだ事ないかも。
これはせっせさんの本だったけど、銀色さんの本、今度読んでみようかなぁ。

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