ペンギン・ハイウェイ

"世界の果ては折りたたまれて、世界の内側にもぐりこんでいる"

ペンギン・ハイウェイ

たいへん頭が良く、将来はきっとえらい人間にあるだろうと自負する、小学四年生の少年。
郊外の街にすみ、集団登校で小学校に向っている途中、空き地を動く何かを見つける。
それは、、、ペンギンであった。
キウキウキシキしと鳴くペンギンがなぜ、それも街中に現れたのだろうか。
少年はいつも通う歯科医院のお姉さんとペンギンの不思議について語るが、謎は深まるばかり。
そして、クラスが同じのウチダ君との探検で、またしてもペンギンの群れを目撃する。
かくして少年の、「ペンギン・ハイウェイ調査」が始まるのであった。

著者・森見登美彦

森見さんの最新小説。
なんとこのような小説が書けたとは!
冴えない貧乏学生(?)の不毛な活動を描く小説は見る影も無く、一人の少年とその柔らかな心情を森見エッセンスを注入しつつ描写する。
裏切りに断固抗議する。やってくれたなコンチクショウ。

主人公である少年アオヤマ君はたいへん賢い。
"まず、問題は何か、ということをよく知らないといけない。"
"毎日の発見を記録しておくこと。そして、その発見を復讐して整理すること。"
その他、父親からの教えを書き留め、日々研究に勤しむ。
彼の研究は広範囲であり、一人で研究するときもあれば、同じクラスのウチダ君と共に探検にでることもある。
そんな彼は、このまま成長するとえらくなりすぎて想像もできなくなってしまうと心配する、たいへんな自信家でもある。

主な登場人物はこうだ。
科学の子、少年アオヤマ。気が弱い哲学者、ウチダ君。スズキ君帝国皇帝、ススキ君。クラスのマドンナ、ハマモトさん。
そしてそれを見守り少年アオヤマと戯れる歯科医院のお姉さん。
小学生らしい関係図で小学生らしからぬレベルで研究を進める彼ら。そして話の核となるのは、ペンギンの謎。

謎が紐解かれて行くとき、その先にあるものは。
"そうしたら、私を見つけて会いにおいでよ"
世界には解決しないほうがいい問題もあるのだろうか。

草食系男子の、ふにゃりと柔らかいところをつつかれる本作。
幼い頃の憧れ、これ重要。しかしロリコン好きはことごとく却下だ。
テーマも分かりやすいし、映像化しても面白い。というか半分映像化を狙ってるような。とにかく大衆娯楽にうってつけ。
ということで昨今の森見人気によりこれは映画化が期待できる。いや映画化決定。
お姉さん役は麻生久美子姉さんでお願いします。

おすすめ度:80点

この夏海に山にと明け暮れるのも良いけれど。ふとした空き時間にこの本を読んで見ては如何だろう。
夏のこの時期に読みたい一冊。
一人の少年の冒険と甘酸っぱさと成長を。そして読み終えたら、こう叫ぼう。

おねえさぁぁぁん

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