ネバーランド

"今自分達がここに存在しここで愉快な時間を過ごしている事を確認するために、とにかく彼らは喋り続けた"

ネバーランド (集英社文庫)

とあるど田舎に存在する伝統ある男子校。
この学校には寮が備わっており、"松籟館"と呼ばれる古い木造の建家に男子学生達は生活している。
冬休みに入り、年末年始を家族と暮らすため、それぞれの学生達は各々の実家へ帰って行く。
その中で、美国は寮で新年を迎える事に決めた。「帰る」という言葉に嫌悪感を抱くのが一つの理由だ。
美国の他にも、寮に残る学生はいた。寛司と光浩だ。
彼ら3人は、お互いルールを決め、年の瀬を寮で過ごすのだが、いつのまにか一人、統という通学組の学生も加わる。
男子4人、邪魔する者もいない寮で、自由な生活を過ごす。
しかし彼らは、それぞれの心に傷を抱えているのだった。
4人だけで過ごす寮の生活で、少しずつ、彼らの傷が語られていく。

著者・恩田陸

イン・ザ・プールのシリーズでお馴染みの恩田さん。そういえば恩田さんのは書いてないな。
男子寮で起こる、一冬の物語。
同じ経験がある。
こういう、限定された条件下で一緒に生活するということ。
俺の場合はリハビリ生活だったけど、波長が合えば、ぐぐっと濃い時間になる。田舎ってのもポイントだよね。
彼ら4人はそれぞれに傷を抱えている。
あることからそれぞれがその傷を語り始める。
最初はいびつだった形が、いつの間にかすんなりと4人の形になっていく。

傷を知る。その時はただ聞くことしか出来ないけど、でもそれを共有する。
すごく落ち込むけど、それでも次の日は笑って一緒に朝食をとったり、テニスをしていたり。二日酔いだったりもするけれど。
4人は、4人の冬を過ごすのだ。

一夏の思い出があれば、こういった一冬の思い出もある。そんな、彼ら4人だけの、一冬のネバーランド物語。

おすすめ度:75点

学生の頃、寮に入っていた人は懐かしみ、入っていない人は寮に憧れたり。
そんな、寮ならではのお話なのでした。

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