メメント

"本当に世界はあるか?"



監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン


10分間しか記憶が持たない男、レナード。
彼は妻が殺された事件から、新しい記憶が10分間しか維持できない脳になってしまう。
そんな状態になりながらも妻の復讐を生きる目的とし、妻を殺した犯人を追う。
ジョン・G。白人。電話に出るな。ジミーを忘れるな。
記憶が保てない彼のとった手段は、体にタトゥーを彫り、重要なキーワードを守ろうとすること。
タトゥーのキーワードを手がかりに、彼の犯人追跡のストーリーが再生されていく。。

一本とられた。

物語の軸になるのはレナードの復讐劇なんだけど、本作最大の要因である「短期記憶喪失」
やっていたこと、会った人物、その他諸々が綺麗サッパリ消えてしまう。
毎回リセットボタンを押されるかのように、「ここはどこ?」から始まる恐ろしさ。
人によって対処の方法は違うんだろうけど、やっぱり次回の自分に残す情報=”メモ"が重要なんだろう。
でもそのメモは本当に自分で書いたものなのか、他人に利用されているんではないのかと、疑心暗鬼になってしまう。
考えや意思っていうのは、自分の経験してきた事や記憶した事から湧き出てくるもので、それは強烈な体験や時間の経過によってまるで積み木を重ねて行くように形成され、習慣や性格なんかに反映されていく。
でもそれは積み重ねて行くからこそであり、新しい記憶が保てなくなってしまったら、もうその積み木は高くならない。
だからこそ、次の自分に残すべく、メモやタトゥーで情報を残す。少しでも積み木を重ねるように。
ではなぜ、積み木を重ねるんだろうか。
レナードの答えは、それは妻のためだった。
愛する妻を殺した犯人に復讐をすることが、彼の目的になっているのだ。
そして迎えるクライマックスでは、狂気の他に切ないまでの、彼の生きる意思を感じる。
それでも積み木を重ねるのだ、と。

おすすめ度:80点

記憶を無くしたら、一体何を失ってしまうのか。
家族?友人?恋人?妻?夫?夢?仕事?地位?富?自分?世界?

自分を確かめるものって何だろう。自分を突き動かすものって何だろう。

巻き戻し演出による記憶の道筋を、ご堪能あれ。

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