仮面の告白

"私という存在が何か一種のおそろしい「不在」に入れかわる刹那を見たような気がした"

仮面の告白 (新潮文庫)

著・三島由紀夫

幼少から社会に出た頃の成年時代までの「私」を綴った、自伝的小説。

「私」の最初の記憶は、生まれたときである。産湯に使われた盥の、ゆらめく光の縁。
そこから「私」の回想が始まる。
官能と嫌悪が幼少時代に植え付き、それらと共に悩み、成長し、「仮面」を形作って行く。
彼の感情はメビウスの輪のごとくグルグルと周り、そしてついには仮面が出来上がる。

さすが純文学、いままで読んだ小説とは違う。
読み手には"読力"が求められるわ。難しい。。
三島氏のいう、
"低級な読者は低級な酒に良い、高級な読者は高級な酒に酔います"
のセリフを思い出す。。
本書は「私」の人生の歩みと共に、内面の歩みを告白している。
もっぱら"半自伝的"という言葉があり、自分自身のことではないのか??などの疑問にあたるが、その手法から告白自伝の世界観は強い。
告白というから何か秘密の匂いがそこから漂う訳だが、開いてすぐに、その特異性が分かる。
単純に、「え?三島由紀夫ってそっちなの?」というのが最初の感想なのは言うまでもない。
官能と嫌悪が芽生えてから、彼はゾッとするような空想にふけ、悪習に至る。
そしてその味は彼を虜にし、また惹きつけられた友人にそれを重ね合わせていく。
一方で自己欺瞞という機械の中に入り込み、時に内省の世界を歩く。
メビウスの輪をなぞるように彼の感情は翻弄し、仮面という輪を完成させる。
それは結末に描写されるぎらぎらと凄まじく反射される光が、あたかもゆらめく光の縁を回想させ、「誕生」を連想させる。

おすすめ度:80点

こうなってくるとドストエフスキーの小説も読まないとなぁ。
「罪と罰」、途中で読むの止まってるんだよね。。

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