日本人とユダヤ人

"日本人をユーラシア大陸から少し離れた箱庭のような別荘で、何の苦労も無く育った青年と見るなら、ユダヤ人はユーラシアとアフリカをつなぐハイウェイに裸のまま放り出された子供である"

日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)

ユダヤ人の「内なるゲットー外なるゲットー」の苦悩に比べて、日本人の自由さ。
黒死病や城壁都市、鍵に地下水道や下水道。そんなものに縁も必要も無かった日本の安全さ。
牧畜生活をしなかった、また遊牧民と接触しなかったことで生まれた、西欧の感覚と純農耕民であった日本人の感覚の違い。
などなど、文庫本のサイズで濃厚な日本人とユダヤ人の相互価値観を知る事が出来る、今からおよそ40年前に出版された良書。

著者はユダヤ人であるが、日本で生まれ、日本で育ったユダヤ人である。
であるからして、著者の"客観性"と、"比較"が面白い。
そして知識が幅広く、色んな引き出しから鋭い指摘をしてくる。
一体何冊本を読んだの、ってくらいに。

もともと歴史に明るくなく、ユダヤ人のこともほとんど知らない。
しかしこの本を読めば、ある程度、その長きにわたる巨大な背景や、考えを垣間みれる。
面白かったのは、クローノスの例え話や、全員一致の審判は無効の考え方、日本教徒の話。
本を読めば読むほど、それぞれの考え方、感覚が違う事が分かる。
そしてこれは、もちろん今の国際社会において人レベル、国レベルで違いがあるわけで、著者言うように、相互理解がいかに難しいか、それはあとがきの文末を読めば分かるだろう。

ということで、ユダヤ人に興味のある人はもちろん、日本人論に興味のある人はどうぞ。

おすすめ度:80点

シェークスピアの"ヴェニスの商人"も、これを読んだ後では違った感想が持てるかも?

と、ここまで書いたところで、実はこの本、当時議論が巻き起こったもののよう。
「イザヤ・ベンダサン氏=山本七平」説だとか、内容は疑わしいものばかりだとか、疑惑付きの本のようだ、、
本書の嘘を暴いた、「にせユダヤ人と日本人」(浅見定雄)が本書と併せて必読のようなので、後日読んでみよう。

コメント