行きずりの街

"暴力を許す唯一の培養基は、この自己の正当性という、だれでも買える、
しかもいちばん容易に買える、日用品としてつくられるのだ。"


行きずりの街 (新潮文庫)

著・志水 辰夫

田舎で塾の教師をしている主人公・波多野和郎。
ある日、塾の生徒であった広瀬ゆかりが音信不通となり、彼女の祖母が危篤である事を告げに上京する。
彼は昔、東京の女学園で国語の教師をしていたことがあり、当時、学園の卒業生と結婚をするのだが、その後離婚する。
これにはある事件が絡んでおり、彼はその事件を今でも忘れる事が出来ない。
東京は彼にとって懐かしくもあり、しかし暗い過去を甦らせる街でもあるのだ。
そんな街に久しぶりに舞い戻り、音信不通のゆかりを探すうちに、いつしか彼は忘れる事が出来ない過去との対峙をすることになっていく。

志水 辰夫が今再び話題になっている-。
そんな文句で手に取ったこの一冊。
1990年の作品で、何やら2006年頃から人気が再加熱した本作。

内容はミステリーで、主人公の和郎がゆかり探しと過去の事件への憎悪をエネルギーに、次々と浮上する疑惑や真相。そして過去とのつながりが明らかになり、徐々に復讐の悪魔となって宿敵に鉄槌を下すべく突き進んで行く。
罠にかかって殴られ様が蹴られようが血反吐を吐きながら相手に向かって行く。
それがまるでボブ・サップのような相手でも。

"人間を最後に支えてくれるもの、それはいつだって憎悪なのだ"

その言葉通り、彼が復讐の権化となっていく様を、目撃することになる。
この塾教師はただ者じゃあない。ゴクリ。。

最近何かが憎くて憎くてたまらないって人は、この本読んでも「やればできる。」って思わないように。。

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