アルケミスト -夢を旅した少年-

"おまえの心に耳を傾けるのだ。心はすべてを知っている"

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

著・パウロ・コエーリョ

少年の名はサンチェゴといった。
彼は羊飼いで、羊の群れを引き連れ旅をして暮らしている。
最近、サンチェゴは不思議な夢を見る。それも繰り返して。
あるとき、それは宝の夢である事を彼は知る。

これは彼が出会う人々とサンチェゴ自身の、旅のお話。

凄い本を書く人がいるもんだ。
これは羊飼いの少年が夢を旅して成長していく物語なのだが、素朴でありながらも決して表面的ではない、奥へと届くメッセージがつまっている。
作中に出てくる言葉は至言と感じる言葉が多く出てくる。
下にいくつか紹介すると、

"結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ"
小さい頃に夢見た人も、多くがそうなるように、社会、人からどう見られているか、どう思うかという方が重みを増してしまうんだと思う。
家庭環境であったり生活であったり理由は様々だろうが、結局は人の中で生きている人々、そこに自分が見いだせない人々は、自分の運命を生きていないといえるかもしれない。
かくいう俺も、夢をもって社会に出たというよりも、言葉の中でいうと後者である。
そして、果たして俺は自分の運命を生きているのだろうか、、

"本当に起こっていることではなく、自分が見たいように世の中をみていたのだ"
その通り。
小さい事や自分では気づかない無意識なところで、自分に都合の良いよう思っているだけ、やっているだけかもしれない。
もしくは、大きな問題に直面した時、まっすぐに問題と向き合う事ができているだろうか、、
きっとそれは、自分を偽っているだけなんだろう。

"人はその瞬間、自分の体験をしているものとの関連を見つける事が出来る"
人にはそんな能力が備わっているのかもしれない。
人生は非連続的じゃない、連続的なんだ。そう考えれば、今までの体験だって無駄じゃない。
それを関連づけることが出来て、応用できる人は、人生を真剣に生きている人なんだろうな。

"もし、自分の運命を生きてさえいれば、知る必要のあるすべてのことを、人は知っている"
これだってそうだ。
人や環境に流されるだけの人生ではなく、自分の人生を生きている人は、生きる術を知っている。今までの経験が、全部生きているんだきっと。

"おまえの心があるところが、おまえが宝物を見つける場所だ"
人は自分のことをどれだけ知っているのだろう。
他人のことはある程度分かっても、自分の事は分かったつもりになっていないだろうか。
ちなみに俺は自分のことが分かっているようで分かっていないんだ。
もっともっと、自分の心を知らなきゃいけないんだろう。そしてそれはきっと、自分を信じることなんだと思う。

まだまだこの本の中には届く言葉が多く散らばっている。
そしてそれらは、少年サンチェゴを成長させていく。

慌ただしく過ぎて行く日々の中で、ふと立ち止まって読み直したい、そんな一冊。
読んでみて!

コメント