森見登美彦

前に紹介したと思いきや紹介してなかったみたい。
それが森見登美彦さん。
奈良生まれの京大農学部卒のお方。

森見さんの書く小説は、古い文体の上に独創的な言い回を駆使し、奇妙奇天烈な登場人物が妄想に励む。
そんな作品。

せっかくなので、以下に2つを。

太陽の塔:

「我々の日常の90パーセントは、頭の中でおこっている」

太陽の塔 (新潮文庫)

京大農学部、休学中の5回生というタチの悪い肩書きを持つのは主役である"私"。
過去に、「水尾さん」という2つ下の後輩が恋人だったのだが、ひょんなことから別れてしまう。
以来、付き合ってるときから続いている「水尾さん研究」にはますます力が注がれ、ストーカーもとい調査対象の研究及びその論文はいよいよ文学的価値が高くなっていく。
彼をとりまく環境にはさらに3人の聖人がおり、彼を加えた4人は四天王と勝手に称されている。
かくゆう彼と彼ら四天王の暗躍と妄想と事件の物語が展開されていく。

勝手知ったる京都市内で駆け巡る、四天王達のその崇高なまでの紳士的生活と妄想が炸裂する。
「水尾さん研究」をはじめ、「砂漠の俺作戦」、「悲しみの不規則配列」など、数多の変態事件が物語のなかで出現する。
なかでも笑ってしまったのが、”私"と遠藤が対立し、あの手この手でお互いを攻撃する場面。
数億年の歴史を持つ強靭なる生命の煌めきが炸裂するとき、笑いと恐怖に襲われる。
まったくもって、変態としかいいようがない。
他にも数々の策略と妄想が張り巡らされているが、それは読んでみてほしい。
事件ばかりではなく、言い回しやアイディアも独特。
「道ゆく女性を襲う男を雷としたら、避雷針はAVかな。」
「つい先ほどまで詰まらない心理のチエノワを持て余していた男がー」
四畳半で行われた飾磨の演説も、よくもまああんなにも独創的なことを思いつくものだと感動してしまう。

2003年、日本ファンタジーノベル大賞を受賞した本作は、上に書いたように奇妙奇天烈な"私"とその四天王が織り成す変態事件と、一方で"私"が失恋の痛手から彼女の影をおいかけるという、奇怪ファンタジー小説だ。

それから一年後の2004年。

四畳半神話体系:

「この桃色筆まめ野郎!」

四畳半神話大系 (角川文庫)

京大3回生の"私"は、猛烈な疑問を持っていた。
大学に入学して以来、打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくったのは、なにゆえであるか。
そもそも、彼と出会わなければ、きっと私の魂はもっと清らかであっただろう。
しかし彼こと小津は、こう言うのだ。
「僕は全力を尽くしてあなたを駄目にする。」
これは"私"と悪魔・小津とその他もろもろとの、奇妙なパラレル物語。

前作"太陽の塔"の作風そのままに、いや1.5倍に濃さを増し、さらにストーリー性が高くなった。そんな感じ。
この話の要はなんといっても悪魔・小津の存在。
彼の常人とは思えぬ行動と奇怪さに、目を背けたくなる。
小津がみせる世にも不毛な活躍は、森見ワールドをどんどん色濃いものへと変えていく。
まったくもって森見ワールドは変態なのだ。

入学時、最初の入り口が違ったら。"私"の世界はどう変わるのだろうか。
相変わらずの奇天烈作品が堪能できる。

森見さんの作品は他にもあるけど、見たのは上2つ。
どっちを見ても、1、2ページだけでその世界観を味わえること請け合い。
この人の作品は好き嫌いが別れるだろうなぁ。というか確実に読者層は、男性が多い事だろう。
森見ワールドを受け入れてしまった俺は、果たして変態なのだろうか。。

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