海を抱いたビー玉

「凛。」

海を抱いたビー玉―甦ったボンネットバスと少年たちの物語

著・森沢明夫

物語は瀬戸内海の真ん中に浮かぶ大三島から始まる。
ある日、海岸を歩いていた男が青く光るビー玉を発見する。
ビー玉をポケットにいれ、帰る先には一人の息子が待っている。
男はバスの運転手で、運転するバスはいすずのBX341。親子そろってネコバスのような、このバスをかわいがっていたのだが、ひょんなことからバスと別れることに。
悲しみをこらえて別れを迎える親子とバス。
バスの座席の下にある小さなくぼみに、あの日のビー玉を抱え、バスは大三島から離れていく。
バスを待っていた次の仕事は、なんとスクラップ置き場。
多くの廃材をつめこまれたバスは、いったいどうなるのか、、

人が何かを大切にするという、温かい温度を持った物語。
それはモノであったり、気持ちであったり。
読後に驚いたのが、事実をもとに書かれた作品であるということ。
物語の中に出てくる登場人物は、ほとんどが実在する人であり、バスもまた実在する。
人と人、そしてモノがつなぐしみじみとしたストーリーに感動してしまった。
特に、凄腕のレストア職人、榎さんとの別れのシーンには目から汁が出そうになった。

モノを大切にするという気持ち。それが自分には欠けているなぁと思える。
小学生から大人まで、夏休みに図書館で読みたい一冊。

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