見えないドアと鶴の空

"死など、やはりどこにもないのだ"

見えないドアと鶴の空


著者・白石一文

物語は主人公・昴一とその妻絹子、その親友由香里の3人構成で進む。
2年前に会社を辞めた昴一は稼ぎ頭の絹子へ食事を作る。
絹子は出産による親友への心配で由香里宅を頻繁に訪れる。
由香里は出産に立ち会った昴一に会いに行く。
すこしずつ歯車が狂っていく3人の関係。
昴一の悩み、疑い、思慮、行動の果てに、気づいたものとは。

なんて物語。
白石さんの作品は2作目。
"僕のなかの壊れていない部分"を読み、まるでカミソリのような読感を覚えた。
その感触を覚えていたので、手に取った本作。

わざとらしい伏線を感じつつも、ああ、この心の移り変わり(考え方含め)様や気づく様など、オレも割と普段そういうものかもなぁ、なんて奇妙に感じる話の流れである。
でもなんだろう。ちょっとウスィーのかなぁ。
由香里の力に冷めてしまったという訳ではないのだが、読後の余韻はなぜか薄い。
いわんとしたいことがありきたりだからだろうか。
それに辿り着くプロセスが大事だと思うけど、特に昴一の穴の中での"気づき"で感じたのだけど、早い。
転換が早い。得心が早い。上で行った移り変わりが早い。
ここなのかな、ウスィーと感じてしまったのは。
あとは約束された終わりに向かっていくのだ。
オレはもっと絹子さんの気持ちが知りたいのに!!

前回読感のカミソリを期待していただけに、ちょっと欲求不満で終わってしまった。
と、なんだかんだ言ってもこのテーマは大切なことだと思う。
繋がり合うこと。もっと人との繋がりを大切にしなくては。決して軽んじてはだめなんだよね。
死んでリセットなんて、昴一のいうとうり安直なんだね。

繋がり合って。人生を生きて。そして生を考えて考えて。
んなこといってるオレの経験値は限りなく少ない。考えろ考えろ。動け動け。

ウスィーと思うのは、裏返せば作品をまだまだ汲み取れてないからかもね。

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