さがしもの

"あんたこれ売っちゃうの?"

さがしもの (新潮文庫 (か-38-4))


なんとなく手にした本作。好きだな、この作家。
これは特に、女性の人が好きになりそうな作家のような気がする。

著者である角田さん自身の体験記と、いくつかの作品で構成された短編集。
前半の、体験記がいい。

"そのとき私は、この本の中にどんな私を見いだすのか。"

古本屋の主人から指摘された本と、人生の各所で幾度と再会を果たすこの話は驚きと神秘に満ちている。
さらに、本を読む度に、その内容・解釈が変化する。
それは自身の経験だったり環境の変化だったり、過去の自分とは違う自分を、そこに発見する。
そんな本に出会ってみたいし、もしかしたらもう出会っているかもしれない。

"さようなら、バイバイ、ソーロング"

経験記の中では、角田さんはもちろん彼氏と喧嘩する。しかも旅行の前日にだ。
一人でいった旅先の旅館で、一冊の詩集に入っていた一つの手紙から、手紙の主と角田さんの気持ちがシンクロする。
こんなことって、あるんだね。

"貸してあげるけど、返してね、とくべつな本だから。"

「とくべつな本」っていうのは、内容が凄い気に入っている、というだけではないんだね。
その本にまつわる出来事だったり、それによる泣いたり笑ったり、そんな思い出だったりと、一緒に時間を過ごしてきた本が、その人にとって「とくべつな本」になるんだなぁ。

、、、などなど、角田さんの魅力が垣間みれる本だと感じた。

"いつだってそうさ、できごとより、考えの方が何倍もこわいんだ"

また一人、好きな作家さんができた。

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