イン・ザ・プール

"いらっしゃーい"

イン・ザ・プール (文春文庫)

著・奥田英朗

奥田さんの作品は、サウスバウンドを見たことがあるので、これが2作目。あれも面白かったな。

物語の舞台は伊良部総合病院の地下1階にある精神科。
ここを訪れる患者は稀で、病院内でも好奇な目を向けられるようなところだ。
たまに来る患者は、「医学博士・伊良部一郎」の名札をつけた、一歩間違えれば変態医者と、その助手であるセクシー無愛想看護婦を見て驚かされる。
この奇妙な2人と、患者の持つ病との、奇想天外な治療物語なのだ。

患者も様々なもので、内蔵が学級崩壊を起こす患者、アレが勃ったままの患者、ストーカー被害にあう患者、携帯を離すと震えだす患者、確認せずにはいられない患者、などだ。

"じゃあ、申し訳ないけど、ガラス割っちゃおうか"
"ひどいよね。メイドの服きせたくらいで"
"いつ女性患者と恋に落ちるか分からないからね。ぐふふ"
"早退すれば。診断書ならいくらでも書いてあげるよ"
"生い立ちも性格も治らないんだからしょうがないじゃん"


まさに自由人な伊良部一郎。
彼がどんな技量を駆使し、巧みな治療を行うか。
そんな期待はストレートど真ん中コースだったらしく、バットの芯に当たるが如く、遠くへ飛んでった。
でもどうやらその球は、記念のホームランボールになりそうだ。
伊良部と患者とのやり取りが、奇妙でそして面白い。
患者は悩みを抱えて診察に来たのに、なぜか伊良部一郎の行動に巻き込まれてしまうのだ。
ぜんぜん話が読めない。だってあの先生ほぼ変態なんだもん。
でも先生のことは、携帯の彼がなるほど、と教えてくれた。

伊良部一郎が患者とどう接し、そして患者の悩みがどうなるか。

これはワクワクしながら読める一冊だよ。

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