"世界は常に夜なのよ”
最近小説を読むことがめっきり減ってしまって、いかんいかんと思い手に取ったこの本。
いやー、良いもの読んだ。久しぶりに小説の世界観に浸れた。コロナがなければ、旅先の旅館で読むことで楽しめそうだと思っちゃう。
あらすじはというと、京都で学生時代を過ごした男女六人が、久しぶりに鞍馬に集まるところから物語が始まる。十年前、鞍馬の火祭りで長谷川さんという女性が忽然と姿を消した事件があり、彼らの人生の中の大きな怪奇として残っている。久しぶりに集まった一行は、夜が始まるにつれて、口々にそれぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。すると一人の画家が描いた絵の連作がそれぞれの体験に不思議と関連し始める...というもの。
昔、きつねのはなしという小説を読んだ時にはきつねにつままれた様な置いてけぼり感をくらったことを覚えているのだけど、今回の夜行でそれは昇華された、というか繋がった気がした。ああ、こういうことを書きたかったんだなぁ、と。
静かに、奥底のしれない、何か深淵たるもの。吸い込まれてしまいそうな、行間に潜む影の気配。
境界線が危うくなってしまうような、迷い込んだ様な感覚。
読者にとって読みやすい様に仕上がっていると感じるのは、むしろ森見さんがこれまでの作品で磨かれてきた技量がそうさせているのだろうか。
これって2016年のものなんだね。熱帯はその後2018年だったか。
森見作品の持つ奥行きってものを感じられた。きつねのはなしをいま読むと、また感想が変わるかな〜。
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