鍵泥棒のメソッド

"俺のこと笑えるのかよ"


監督・脚本:内田けんじ


堺雅人演じる桜井は所属していた劇団が潰れるも役者の道一筋でエキストラ役で何とか食いつなげているようないないような生活を送る。
一方、香川照之演じるコンドウは裏社会では知名度のある、きっちり仕事をこなす殺し屋。
二人はひょんなことから町の銭湯で人生を交差させることになる。
その舞台に加わるのは、広末涼子演じる雑誌の編集長であり、恋人を作るよりも先に結婚式を予定する水嶋であった。
この三人の登場人物が交わる舞台に、どんな物語が巻き起こるのか。

劇場公開されてから、見たいなぁと思いつつ見る機会を失っていた本作。
丁度本日地上波放送で、たまたまテレビをつけていたらやっていた、ラッキー。ということで邦作物を久しぶりに鑑賞。

結果は上々、面白い。
堺雅人と香川照之。この名を聞けば、誰もが思い出すであろうツートップ役者だ。
そう、それは半沢直樹である。
まぁ一切見ていないので半沢直樹のことは全く知らない。
むしろこの作品の魅力は脚本とその作り込みだと思う。よく練られた作品だなぁというのが率直な感想だ、

桜井はいかにもダメな演技力を発揮する役者で、才能を感じさせることなくそれが故に今迎えている生活の苦境に直面しているように見える。
コンドウは完璧主義者で緻密な計画と確実な実行力、そして鳥飛ぶ後を濁さずの徹底した仕事ぶりを発揮する、冷徹漢のように見える。
水嶋は水嶋で、目標を決めたら計画通り進める有能な編集長よろしく、テキパキと物事を正確にこなすキャリアウーマンのように見える。

しかしそれぞれ抱えている想いがあるのだ。
それをときほぐすきっかけとなるのは、銭湯でのアクシデント。
そこから展開される物語は、正直、この三人がどうやって関わり合っていくのか予想がつかない。
しかし本作の監督でもあり脚本家でもある内田けんじは、登場人物の人柄と魅力を十分に引き出す仕掛けを容易し、時にユーモアを混じえ、作品に引き込んでいく。
中だるみをすることなく、見ているものを楽しませるプロットと演出はお見事だ。
話の中でいくつかのヒントという小石を落としてゆき、拾い上げた小石から想像するストーリーは、こういうことではないかな、という正にその時に、半歩進んだ展開を披露し観客をさらに惹きつける。
話の展開とその演出のテンポは、見るものの半歩先を行くことで、見るものを飽きさせず楽しませるエッセンスだ。
その物語をより魅力にしているのが、堺雅人であり香川照之さんであり広末涼子なのだ。
どれも登場人物の魅力を披露し説得力を与えてくれる点で、配役はバッチリだ。
広末涼子のこういう役は本当にしっくりくる。
(ちなみに、荒川良々だって良い味だしている点で負けてないぞ!)

人間味があるからこそ物語が魅力的になり、物語に魅力があるからこそ人間味が溢れる。
そんな映画だった。

告別式のアイディアは俺もやってみたいなぁ!

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