"運命がいかなる道を示そうと、ただその道を行かん"
著者:ジュール・ヴェルヌ
主人公は鉱物学者であるアクセル。
その叔父は鉱物学の権威であり、地質学者として天性の才能を持つリーデンブロック教授だ。
"おお、なんという本じゃ!" そう驚嘆の声をあげる叔父が感動する訳は、その本が活版印刷も無い700万年前にアイスランドで書かれた本であり、ほとんど完璧に製本されたものであったからだ。
その素晴らしさを叔父はアクセルにとくとくと説いていると、本の中から汚れた羊皮紙が一枚ひらりと飛び出し、床に落ちた。
そこには古代に発明されたルーン文字で書かれた謎の暗号があった。
この暗号との出会いが、のちに始まる壮大かつ奇想天外な旅の幕開けなのであった。
面白い!
ここ数日間、ワクワクを提供してくれる本だった。
この本には色々な要素が詰まっている。科学、紀行、歴史、愛、希望、絶望、などなど。
児童書として簡易版があり、小学生の頃に読んだという人も多いかもしれない。
海底二万里の方が有名かも。俺は今回お初。
地球の中心はどうなっているか。
1864年に刊行されたこの本は、地球の中心は燃えている、冷えている、空洞である、という学説が飛び交う世であったらしい。
「地球の中心は冷えている」という主張に立つリーデンブロックと、「地球の中心は燃えている」という主張に立つアクセル。
二人の議論はぶつかるが、リーデンブロックの熱意と情熱にあてられ、アクセルは言う。"行きましょう!"
二人はおよそ対比的だ。
リーデンブロックは素晴らしい頭脳の持ち主だけでなく、情熱と不屈の精神を持っている行動家だが、短気で勝気な一面もある。
一方アクセルは本能的な叔父に比べて理性的で安全を重んずる、平和的であり妄想家でもある人物像だ。
この二人の掛け合いは実に楽しい。
リーデンブロックが持論を展開し無茶を言い出すと、アクセルは短気な叔父を怒らせまいと気を配りながらも批判や疑問を呈する。
そして結局リーデンブロックが癇癪を起こし、アクセルはすかさず白旗を振るのだ。
常識的な振る舞いをするアクセルの視点を通し、リーデンブロックという強烈な竜巻の取る行動に巻き込まれていく様は、彼の心理描写も相まってまるで喜劇を見ているかのような気分になる。
そして時折、考えとは別に感情が先走りするアクセルの姿についつい感情移入してしまう。
おっと、忘れてはならない人物がもう一人。奇想天外な旅を共にする、アイスランド人のハンセ。
彼の寡黙だがずば抜けたサバイバル力と不動の精神が無ければ、この度は序盤で終わっていたことだろう!
作中それぞれの事柄は科学的知見で書かれ論理的に組み立てられているのだが、物語を動かす核はむしろ人の情熱や生きる力という要素だったりする。
リーデンブロックがその先導者であり、アクセルは旅を通してかつての自分とは少しずつ変わっていくことになるのだ。
しかし著者ヴェルヌの知識は幅広い。
鉱物、地質、火山、古生物、物理や化学などの様々な科学知識が随所に散りばめられている。
それだけではなく、暗闇の中を懐中電灯のように照らす"ルームコルフ装置"という、当時電気が一般に出始めた時代においては先進的な装置を物語に登場させた。
また、地底を進むにつれ進化の歴史を辿るかのような記述がある点に、1859年に発表されたダーウィンの「進化論」の要素が取り入れられており、最新の学説をすんなりと取り入れていることも、本書解説の中で触れられている。
キリスト教宗教の影響が小さくなり無神論者が増え、「神は死んだ」と言ったニーチェが誕生した19世紀。
イギリスから起こった産業革命がヴェルヌの生まれたフランスへと広がる中、科学の力が世を席巻し、ヴェルヌは宗教ではなく科学の力を信じ、その空想の中を旅したのだ。
ヴェルヌの書いた冒険小説は他にもいくつもある。他の小説も読んでみよう!
著者:ジュール・ヴェルヌ
主人公は鉱物学者であるアクセル。
その叔父は鉱物学の権威であり、地質学者として天性の才能を持つリーデンブロック教授だ。
"おお、なんという本じゃ!" そう驚嘆の声をあげる叔父が感動する訳は、その本が活版印刷も無い700万年前にアイスランドで書かれた本であり、ほとんど完璧に製本されたものであったからだ。
その素晴らしさを叔父はアクセルにとくとくと説いていると、本の中から汚れた羊皮紙が一枚ひらりと飛び出し、床に落ちた。
そこには古代に発明されたルーン文字で書かれた謎の暗号があった。
この暗号との出会いが、のちに始まる壮大かつ奇想天外な旅の幕開けなのであった。
面白い!
ここ数日間、ワクワクを提供してくれる本だった。
この本には色々な要素が詰まっている。科学、紀行、歴史、愛、希望、絶望、などなど。
児童書として簡易版があり、小学生の頃に読んだという人も多いかもしれない。
海底二万里の方が有名かも。俺は今回お初。
地球の中心はどうなっているか。
1864年に刊行されたこの本は、地球の中心は燃えている、冷えている、空洞である、という学説が飛び交う世であったらしい。
「地球の中心は冷えている」という主張に立つリーデンブロックと、「地球の中心は燃えている」という主張に立つアクセル。
二人の議論はぶつかるが、リーデンブロックの熱意と情熱にあてられ、アクセルは言う。"行きましょう!"
二人はおよそ対比的だ。
リーデンブロックは素晴らしい頭脳の持ち主だけでなく、情熱と不屈の精神を持っている行動家だが、短気で勝気な一面もある。
一方アクセルは本能的な叔父に比べて理性的で安全を重んずる、平和的であり妄想家でもある人物像だ。
この二人の掛け合いは実に楽しい。
リーデンブロックが持論を展開し無茶を言い出すと、アクセルは短気な叔父を怒らせまいと気を配りながらも批判や疑問を呈する。
そして結局リーデンブロックが癇癪を起こし、アクセルはすかさず白旗を振るのだ。
常識的な振る舞いをするアクセルの視点を通し、リーデンブロックという強烈な竜巻の取る行動に巻き込まれていく様は、彼の心理描写も相まってまるで喜劇を見ているかのような気分になる。
そして時折、考えとは別に感情が先走りするアクセルの姿についつい感情移入してしまう。
おっと、忘れてはならない人物がもう一人。奇想天外な旅を共にする、アイスランド人のハンセ。
彼の寡黙だがずば抜けたサバイバル力と不動の精神が無ければ、この度は序盤で終わっていたことだろう!
作中それぞれの事柄は科学的知見で書かれ論理的に組み立てられているのだが、物語を動かす核はむしろ人の情熱や生きる力という要素だったりする。
リーデンブロックがその先導者であり、アクセルは旅を通してかつての自分とは少しずつ変わっていくことになるのだ。
しかし著者ヴェルヌの知識は幅広い。
鉱物、地質、火山、古生物、物理や化学などの様々な科学知識が随所に散りばめられている。
それだけではなく、暗闇の中を懐中電灯のように照らす"ルームコルフ装置"という、当時電気が一般に出始めた時代においては先進的な装置を物語に登場させた。
また、地底を進むにつれ進化の歴史を辿るかのような記述がある点に、1859年に発表されたダーウィンの「進化論」の要素が取り入れられており、最新の学説をすんなりと取り入れていることも、本書解説の中で触れられている。
キリスト教宗教の影響が小さくなり無神論者が増え、「神は死んだ」と言ったニーチェが誕生した19世紀。
イギリスから起こった産業革命がヴェルヌの生まれたフランスへと広がる中、科学の力が世を席巻し、ヴェルヌは宗教ではなく科学の力を信じ、その空想の中を旅したのだ。
ヴェルヌの書いた冒険小説は他にもいくつもある。他の小説も読んでみよう!
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