その知らせは会社からの帰り際に来た。
ついに。
そう、思ったんだ。もう心の準備は出来ていたから。
お前が来たのは15年前だったな。
当時はまだ聞き慣れない種類で、色も黒でもなく白でもない、白みがかったグレーな色で、ちょっと珍しかった。
最初はぜんぜんなつかなくて、エサをくれる母親のところにばかりいた気がする。
毎日毎日、エサをあげたりじゃれたりしながら、少しずつ、俺に心を許してくれたよね。
俺がご飯を食べてると、必ず横に座って、その目と手とか細い鳴き声を駆使して、分けてくれるよう訴えてきた。
散歩先の公園でリードを外すと、嬉しそうに駆け回っていた。
そういえば、ある日駆け回っていたところを、知らない犬に襲われていたよな。あの時はちゃんと見てなくてごめんな。
別の日、偶然その犬と再会することがあって、吠えてくる向こうの犬に対して、負けじと吠え返しているお前がいたな。
いつもご飯をねだってくるお前の姿を見ていたから、ちょっと驚いたよ。
あれもリードを外していたときだった。
早朝でまだ人影もない頃、道路の直線をお前と思いっきり走ってた。
そこを丁度、横から車が飛び出してきて、お前をひくようにして通過して行った。
あのときは本当に祈ったんだ。
結果、タイヤに触れる事なく車の下をくぐり抜けて、何事もなかったよな。
思い返すと、なんかダメな飼い主でほんとにごめん。
実家にいる時。
同じ道を一緒に散歩したな。
いつも隣で一緒に食事をしたな。
寝るときはいつも一緒の布団だったな。
そして俺の寝相のせいか、朝目覚めるといつも違うところで寝てたな。
昼寝だって一緒にしたな。
公園や家でいっぱいじゃれたな。
そう、実家にいる時、俺は毎日お前と一緒だったんだ。
もうあの日は戻らないんだな。
なんでこんなことを思うんだろう。なんでこんなことを書いているんだろう。
ただ感傷的になってるだけなのかもしれない。悲しみに浸り自己陶酔をしているだけなのかもしれない。
時々、客観的で、冷めた考えを持つ自分が嫌になる。
心の準備はできていた。
今月に入ってから食欲もなく、立つ事もままならないお前の姿を聞き、そして見ているのはつらかった。苦しそうだった。
高齢で寿命も近づいていることは明らかだった。もう楽になりたいんだよな、とさえ思った。
それでも今。
お前がいない家を想像すると、何か先の見えない、空っぽの空間に覆われてしまう様な感じに襲われる。
帰ったらシッポをふって出迎えてくれるお前はもういない。
一緒に散歩したあの道を歩くことはもう出来ない。
食事の横で見つめてくるお前はもういない。
一緒の布団で寝る事だってもう出来ない。
いつもいたはずのお前が、もうそこにはいない。
そんなことを想像すると、前が霞む。涙が止まらないんだ。
でも大丈夫。俺は割とドライなんだ。気持ちを切り替えられる。きっと今日だけだ。
誰かが言ってた。
死ぬときが本当の別れじゃない。忘れられた時が本当の別れなんだ、と。
この先、日常の中でこの事はたまに思い返すぐらいになるのかもしれない。
ずっと先になると、思い返すことがもっと少なくなるかもしれない。
でも、一緒にいた時間は失われない。忘れることなんか、決してない。
最後に、これからお前に会いに行くよ。
会える時間は少ないけど、ちゃんとお別れしときたいもんな。
旅行に行く前と帰って来た時、会えて良かった。
さよなら。そしてありがとう、ごま。
今日の日の事を、書き留めておきます。
2010.9.22.水曜.
ついに。
そう、思ったんだ。もう心の準備は出来ていたから。
お前が来たのは15年前だったな。
当時はまだ聞き慣れない種類で、色も黒でもなく白でもない、白みがかったグレーな色で、ちょっと珍しかった。
最初はぜんぜんなつかなくて、エサをくれる母親のところにばかりいた気がする。
毎日毎日、エサをあげたりじゃれたりしながら、少しずつ、俺に心を許してくれたよね。
俺がご飯を食べてると、必ず横に座って、その目と手とか細い鳴き声を駆使して、分けてくれるよう訴えてきた。
散歩先の公園でリードを外すと、嬉しそうに駆け回っていた。
そういえば、ある日駆け回っていたところを、知らない犬に襲われていたよな。あの時はちゃんと見てなくてごめんな。
別の日、偶然その犬と再会することがあって、吠えてくる向こうの犬に対して、負けじと吠え返しているお前がいたな。
いつもご飯をねだってくるお前の姿を見ていたから、ちょっと驚いたよ。
あれもリードを外していたときだった。
早朝でまだ人影もない頃、道路の直線をお前と思いっきり走ってた。
そこを丁度、横から車が飛び出してきて、お前をひくようにして通過して行った。
あのときは本当に祈ったんだ。
結果、タイヤに触れる事なく車の下をくぐり抜けて、何事もなかったよな。
思い返すと、なんかダメな飼い主でほんとにごめん。
実家にいる時。
同じ道を一緒に散歩したな。
いつも隣で一緒に食事をしたな。
寝るときはいつも一緒の布団だったな。
そして俺の寝相のせいか、朝目覚めるといつも違うところで寝てたな。
昼寝だって一緒にしたな。
公園や家でいっぱいじゃれたな。
そう、実家にいる時、俺は毎日お前と一緒だったんだ。
もうあの日は戻らないんだな。
なんでこんなことを思うんだろう。なんでこんなことを書いているんだろう。
ただ感傷的になってるだけなのかもしれない。悲しみに浸り自己陶酔をしているだけなのかもしれない。
時々、客観的で、冷めた考えを持つ自分が嫌になる。
心の準備はできていた。
今月に入ってから食欲もなく、立つ事もままならないお前の姿を聞き、そして見ているのはつらかった。苦しそうだった。
高齢で寿命も近づいていることは明らかだった。もう楽になりたいんだよな、とさえ思った。
それでも今。
お前がいない家を想像すると、何か先の見えない、空っぽの空間に覆われてしまう様な感じに襲われる。
帰ったらシッポをふって出迎えてくれるお前はもういない。
一緒に散歩したあの道を歩くことはもう出来ない。
食事の横で見つめてくるお前はもういない。
一緒の布団で寝る事だってもう出来ない。
いつもいたはずのお前が、もうそこにはいない。
そんなことを想像すると、前が霞む。涙が止まらないんだ。
でも大丈夫。俺は割とドライなんだ。気持ちを切り替えられる。きっと今日だけだ。
誰かが言ってた。
死ぬときが本当の別れじゃない。忘れられた時が本当の別れなんだ、と。
この先、日常の中でこの事はたまに思い返すぐらいになるのかもしれない。
ずっと先になると、思い返すことがもっと少なくなるかもしれない。
でも、一緒にいた時間は失われない。忘れることなんか、決してない。
最後に、これからお前に会いに行くよ。
会える時間は少ないけど、ちゃんとお別れしときたいもんな。
旅行に行く前と帰って来た時、会えて良かった。
さよなら。そしてありがとう、ごま。
今日の日の事を、書き留めておきます。
2010.9.22.水曜.
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