蛍・納屋を焼く・その他の短編集

"そして僕は自分の体の中に自分自身がすっぽりと収まっている事を認める"

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

著・村上春樹

同僚に借りて読んだ村上春樹作品、初読書。

なんと淡々と書く事か。
区切りが多い。区切りが多いので、文が短い。
文が短いので、淡々と感じる。
しかしただ淡々としてるわけじゃなくて力強さも感じる。
そして何故か淡々としたそのテンポに慣れてしまう。

気づくに、体言止めが多いから、短く力強く感じるのかな。
読み始めは文章だけ見たら中学生の日記かと思った。

そして、各作品に出てくる"僕"がだいたい冷めている。ように感じる。
虚脱感がすさまじかったり、葉っぱ吸っちゃったり、田舎に引っ込んじゃったり。
大体の主人公が"陰"を持っていて、森の中の湖で漂っている、そんな"静"の感覚を覚える。

他に感じた特徴として、徹底した主人公の主観側の小説だということだ。
だからこそ、"感覚"の表現が多く感じる。そしてそれらはナルホドと思うものもあれば、ナンジャソリャなものもある。

伏線を伏線のままに終わらせたりだとか、謎を謎のまま終わらせりだとか、もう徹底的な主観主義。
まさに行間を読めといわんばかり。
これがいわゆる純文学ってやつなのか。

伊坂幸太郎だとか奥田英朗だとか、平易といったら語弊があるかもしれないけど、そういった作品と比べると、雰囲気もの、余韻ものな感じで、ナルシスト感すら漂ってくる。
一方で、独特の言い回しが珍妙で、面白い。そこが人気の理由の一つだろうけど。
まあ他の作品も見てみよう。

最後のあとがきが生まれた年月だったことにちょっとビックリ。

ということで、村上春樹作品に踏み入れ始めた今の時点では、うーんな感じ。
作品を読み重ねるうちに、その村上雰囲気にまんまとやられてしまうのかなぁ。

おすすめ度:60点

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