ブルータワー

"人の価値を決めるのは、生まれた標高でも居住空間の広さでもない。
結局はすべてを奪われて裸にされたとき、自分からすすんでなにかをするかなのだ"


ブルータワー

著・石田衣良


舞台は2つ。21世紀と23世紀の新宿。
21世紀を生きる彼、瀬野周司は脳腫瘍を患い、1,2ヶ月の命と宣告される。
恐怖と痛みに苦しむ周司は、途方にくれるある日、強烈な痛みに襲われる。
一方、23世紀の世界は"黄魔"とよばれる、感染後の死亡率約90%という最凶ウイルスにより、人類は危機に瀕している。
地表はウイルスに犯され、人々は高さ2kmに及ぶ超高層の塔に住む。
第1〜5層に区別される塔の中で、第1層に住むセノ・シュー。
しかし21世紀の周司が強烈な痛みに襲われると、彼の精神は23世紀のセノ・シューの中に入り込む。
セノ・シューの体を通して、周司はなぜか、9・11を思い出している、、

解放同盟の指導者、ミコシバは言う。
「時の壁だって超えるという力をみせてごらんよ」

大地の家の青年、アラクシは言う。
「わたしはあなたを助けたんじゃない。世界を助けたんだ。」

セノ・シューもとい周司は言う。
「誰か他人のために懸命に動いている時だけ、人間は自分の人生を生きられるのかもしれないな」

七塔連合代表、オダは言う。
「わたしは人類の火を明日につなぐためなら、歴史的な犯罪者になってもかまわない」

吟遊詩人、カネマツは言う。
「戦って死ぬか、いつかウイルスで死ぬか」

ライブラリアンのココは言う。
「シュー様、誰かに信じてもらえるというのは、とても素晴らしいことですね」


作者は池袋ウエストゲートパークでお馴染みの石田衣良さん。
小説はこの作品が初見だけどね。

ジャンルとしてはSFに入るんだろうけど、振り子のように舞台を行き来する周司の内情と、次々と展開を迎えるストーリーが織り混ざって、テンポ良くページをめくる事が出来る。
本を手にとったときは分厚っ!と思うのだが、石田さんが描く振り子のペースに引き込まれれば、物語の終点まであっと言う間。
なんだか感触として、ゲームのような感覚を覚える事がある、
ゲーム、といってもRPGについてだけど、その基本はイベントをクリアするごとにストーリーが進んで行く。
主人公が敵を倒したりだとか、宝をみつけたりだとか、人を助けたりだとか。
なにかイベントを進めて行く事で、最後に大きな山場を迎え、エンディングへと繋がる。
本作もそうだ。
主人公の周司が何故か瀕死の状態でゲームが始まり、あわやゲームオーバーかと思いきや、一方でゲーム開始直後から最強のステイタスと最強の仲間と、最強の装備をしている。まるで強くてニューゲーム。
その主人公が、それぞれの世界で問題・イベントに直面して、一歩一歩進んで行く。そしてもちろん2つの舞台で交差するイベントもある。
それらをクリアして行き、最後に山場を迎えてエンディングに繋がって行く、、
ああ、やっぱりRPGだわ。
まあ話がそれたけど、本作は連載形式ということもあり、まあ途中途中連載ならではの進め方が気になる人は気になってしまうのだろうけど、言いたい事は展開のテンポが良い。スピードがある。それが、RPGゲームのストリー展開の感覚を引き起こすのかも。
連載なのだから読者を飽きさせないように色んな話のもっていきかたを考えるのだろうが、そのテンポの良さがストーリーの展開の楽しみに直結している。
まあこのテンポっていうのも、上で書いたゲーム感覚というどこか勢いみたいな感覚を知っている人じゃないと共感ないかもね。

最近仕事で疲れた。疲労がたまって現実みたくないって人は、ちょっとSFの世界なんてどうでしょう。
SFといっても、夢の世界の話じゃないんだな、これが。
上のセリフの世界観に惹かれた人は、是非どうぞ。

コメント

  1. あぁ、俺もこれ読んだ。

    どんな感想を持ったかはあんまり覚えてないけど、インフルエンザに興味を持った記憶がある。笑

    読んだ小説の感想ってのはいいね。

    いらさん の小説はいくつか読んだけど
    娼年 ってのがはまった。俺、娼年やってみたいかも。

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  2. 蠱惑的あタイトルだな。造語か。
    読んでみよ。

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