博士の愛した数式

「君の靴のサイズはいくつかね?」




「私」は家政婦歴10年のベテラン家政婦。ある日、新たな顧客から依頼を受け、訪れた先で「博士」と出会う。
博士の専門は数学で、逸脱した数学力の持ち主。しかし過去の事故がきっかけで、記憶が80分しか保持できなくなってしまう。
そんな博士は、「私」の一人息子を「ルート」と名づけ、大切に可愛がる。

映画はルートの授業から始まる。
ルート役は吉岡秀隆。シャープが前にやっていたecoのCMでのナレーションを思い出して欲しい。猫です、ってやつ。
思い出さなくても分かると思うが、こんな先生いたら絶対寝る!間違いなく。
あんな声で授業されようもんなら、もうその科目はたちまち赤点だ。
むしろ寝まいとして、授業の趣旨とは異なり密かに精神修行の時間になってしまう可能性だってある。
こうなってくるとあの声は実は、日本の生徒から授業に対するやる気を萎えさせる、いわば他国の国家プロジェクトで派遣されたエージェント疑惑が高まったりするわけ。
それでいて絶対生徒に付き合って居残り授業やら補修やらが凄いんだ。
国家への使命感と、生徒への愛情の間で揺れる「葛藤するエージェント」
その傍ら、古志木島で診療所を開いているのは副業なんだ。そうに違い。
話を戻すと、深津絵里がやっぱりかわいい。
この人はキリッとした演技も優しい演技もこなしてしまうから凄い。
内面の弱さを感じさせるのがうまいと勝手に思ってる。
こんな家政婦さんがいたら、ドジをしても絶対許すし、むしろ来てください。
晩御飯作ってください。
そして博士役の寺尾聰がハマリ役。
あの雰囲気と渋い声で、数学のことを、まるで詩を語るようにそっと声に出す。もうぴったり。
博士、私に数学を教えてください!!
とまぁ話は逸れすぎて。。

原作で語られている多くの事は、やはり映画では色々と伏せられている。
劇中の視点をルート先生に置き話が展開されているが、やはりあくまでナレーションでしかない。
しかし真の主役は博士であるので気にはならない。
映画も博士を主軸として、その多くが博士からの影響を描かれている。
優しく、切なく、暖かく、そして奥ゆかしく。
最初から最後まで通して、とても柔らかく暖かい雰囲気を持つ映画だった。
作品の特色でもある、数学をまるで詩を詠むように包み込んで伝える事が、全体の雰囲気をそうさせているのだと思う。
まるで博士の持つ雰囲気を感じるようである。

映画を見ていない人、原作を読んでいない人。
一度どちらか、あるいは両方を手に取り、作品の持つ雰囲気に浸ってはどうでしょう。

原作:博士の愛した数式

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